2025/03/14 18:00
中国茶を本格的に始める際、初心者におすすめの茶器として蓋碗、茶海、茶杯を先日のブログで紹介しました。
しかし、もっと中国茶を本場のように楽しみたい!茶人が使う茶器について知りたい!という方も多いのではないでしょうか?そこで登場するのが、あの茶器。誰もが一度は見たことがある、そう丸っこくて茶色い、なんとも可愛らしいフォルムの「紫砂壺(しさこ)」です。
本日のブログでは、「紫砂壺を使って中国茶を楽しむために知っておきたいこと」をご紹介します。

紫砂壺とは?
まず「茶壷」とは何かをご説明しましょう。広義には「お茶を保存・淹れるための容器全般」を指し、日本で言う急須や茶缶、そして西洋のティーポットも「茶壷」に含まれます。しかし、中国茶の世界において「茶壷」とは「お茶を淹れるための壺」のことだけを指します。ガラスや磁器製のものもありますが、最も代表的なものが陶器製の「紫砂壺」になります。
紫砂壺の特徴とは?
紫砂壺は、お茶を淹れる道具として中国茶文化の中でも非常に重要な茶器の一つ。中国・江蘇省宜興(ぎこう)で生まれ、その特別な土「紫砂土(しさど)」から作られことで紫砂壺と呼ばれるようになりました。漢字の通り、少し紫がかった土になります。
紫砂壺の大きな特徴は、使い込むほどにお茶の風味が壺になじんで、より美味しいお茶を淹れられること。その理由は、紫砂壺の土には無数の微細な「気孔(穴)」があるから。この気孔が、お茶の香りや成分を吸収し、お茶の味を深めていきます。
そのため、一つの紫砂壺で入れるお茶は一種類、もしくは同じ系統のものに限定して使うのがおすすめです。プーアル茶を淹れるための紫砂壺、東方美人茶を淹れるための紫砂壺。岩茶を淹れるための紫砂壺といった形で、お茶の種類によって茶壷を使い分けることで、淹れるたびにお茶の香りがどんどん吸収され、まろやかで香り高きお茶を淹れられるようになっていきます。時間と共に深みを増す味わいは、まるで大切に育てた植物が花を咲かせるような喜びを与えてく、お茶を淹れる時間さえも愛おしくなってきます。眺めているだけでも、愛おしいですが笑

この丸っこいフォルムがなんとも愛らしい
紫砂壺ではどういうお茶を淹れるのがおすすめですか?
紫砂壺を使う際には、お茶の選び方もとても重要です。紫砂壺の特徴を活かすためには、香りや味わいの変化を楽しめる中国茶に使うのが最も適していて、烏龍茶やプーアル茶とは相性が特に良いとされています。
烏龍茶(青茶)
烏龍茶は発酵度合いが中程度のものが多く、中でも中〜重発酵のものは焙煎によって香ばしい香りや甘みを持っています。花のような、フルーツのような、時にはナッツのような豊かな香りを、紫砂壺にしっかりと閉じ込めていくことで、使っていくたびにお茶の香りや味わいが深みを増していきます。
プーアル茶(黒茶)
プーアル茶は、発酵させた後でさらに長期間熟成させた大地のような深い味わいを持ったお茶です。そのため、飲み始めたばかりのプーアル茶は少し渋みやあくが強く感じられることがあります。しかし、紫砂壺に入れることで、この渋みやあくをうまく和らげることができるのです。紫砂壺の持つ最大の特徴の一つである、細かい「気孔(穴)」。この気孔が茶葉のあくや渋みを吸収してくれるため、お茶がよりまろやかでスムーズな味わいに変わっていくのです。
これらのお茶は、紫砂壺の特徴を最大限に引き出すことができ、煎を重ねるたびに味わいと風味が豊かになります。例えば、使い込むほどに色が深くなる革の財布やバッグのようなもの。最初は新品で硬い感じがするかもしれませんが、使い続けるうちに革が柔らかくなり、手に馴染んで、使い込むことでその風合いが増していきます。紫砂壺も同じように、使うたびに壺が茶葉の香りを吸収して、より良い風味を引き出してくれるのです。壺とともに、お茶の世界も深まっていく。なんとも深い。
一方、緑茶や白茶、花茶は低温でサッと淹れるお茶が多く、紫砂壺の保温性が高すぎると渋みが強くなる場合があります。これらのお茶には、ガラスや磁器の茶器の方がおすすめです。

烏龍茶の一種である岩茶(がんちゃ)を工夫茶で淹れる
さて、今回は「紫砂壺を使って中国茶を楽しむために知っておきたいこと」をご紹介しました。紫砂壺は、お茶の味わいを深め、使うたびにその魅力が増していく、まるで一緒に成長していくかのような素晴らしい茶器です。
お茶の種類によって壺を使い分けることで、その香りや風味を最大限に引き出せるのも紫砂壺の大きな魅力の一つ。集め始めたらきりがないですが、、、1つ持っているだけでも本場で中国茶を楽しんでいるかのような気分を味わえます。
次回は、紫砂壺を使ったお茶の淹れ方や、壺のお手入れ方法についてご紹介します。